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新版「クラシックCDの名盤」演奏家篇 [音楽]

23日,東京からの帰り,東京駅の書店で,出たばかりの文春新書を買った。
この本は,宇野功芳,中野雄,福島章恭の共著による,100人の演奏家について,彼らの評価するCDを挙げたものだ。

「この本の読み方」に掲げられているのだが,「…各演奏家に付された論評のうち,冒頭の一文を当該演奏家に最も親近感を持つ著者が担当し,あとの二人がこれを横目で見ながら自説を展開する…,…読者諸兄姉が三者の論考を充分に咀嚼し,コレクションの指針として役立てることを願っている。…」そういうことらしいので,CD購入あるいは蒐集の参考にはなるらしい。
しかし,ここに書かれているとおり,彼らの好みあるいは評価する演奏が必ずしも一致するのではない。
それがこの本の面白いところであり,興味のあるところである。

古今の大指揮者「アルトゥーロ・トスカニーニ」「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー」,この二人の評価にしてからが,大きく評価を分けているのである。
「トスカニーニ」
トスカニーニがスコアから一切の文学性を追放し,「自分は偉大な作曲家のしもべである」という最大級の謙虚さを,トスカニーニは持ち合わせていた。と,福島氏は最大級の賛辞を述べる。
これに対し,宇野氏は,リハーサル風景のCDに対して,「よくもここまでと思われるほど汚い言葉がつぎつぎと飛び出す。その声がまた下品で…」と止まるところを知らない。しかし,宇野氏もトスカニーニの「スコアがすべて」の考え方には共感しているのだが,真っ向から福島氏に対し自説を曲げない。

「フルトヴェングラー」
フルトヴェングラーの演奏哲学の真髄は,「楽譜の背後にある作曲者のイメージを,<音楽によって>聴き手に伝える」という一語に尽きた。と,トスカニーニとは対極にあるフルトヴェングラーを中野,宇野両氏は支持するのに対し,福島氏は誠に手厳しい。トスカニーニにとことん心酔すれば当然のことだろう。
「…実は何を聴いても同じストレスを覚えるのだ。…その煩雑なテンポ操作を追いかけるのに疲れきってしまう…」と,このように切って捨てる。

だから,この本は面白い。私はどちらかというとフルヴェン派である。福島氏が「煩雑なテンポ操作」というのは,フルトヴェングラーの音楽の魅力に繋がっていると思うし,ナルシストであると言うが,芸術家の宿命ではないか。

この本で,かつてブログに書いたCDや演奏家について,たとえば,宇野氏は前橋汀子を挙げてくれたし(他の2氏は不評),クレメルの「クロイツェル」,ブーレーズの「春の祭典」,カルロス・クライバーの「ベートーヴェン4,7)
など取り上げている。自分がよいと思って聴いている演奏が高評価であるのは嬉しい。
しかし,あまり人気がないCDにも,聴いてみると気に入ったものがある。

この本は,そのようなときの手引きをしてくれるものと,青森に着くまで読みふけった。



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コメント 4

jun

今晩は!
今日の富士市は晴れのち曇り青森はいかがでしたでしょうか?
東京行お疲れ様で&若いエネルギーいただいて帰ってきましたでしょうか
いろんな会があって好きな道に進んでいて皆さんピカピカの笑顔ですね
若いって素敵です、


息子さんと久しぶりのご対面で良かったですね、
来ても良いというだけで凄く幸せなこと、素直に育った息子さんは
自慢できますよ!!

これからの日本はどうなるでしょう若い方に
いろんな事に挑戦してもらいたと願います。


福島先生、中野先生、宇野先生方の文春の本読まれたのですね
第一弾に書ききれなかったことを書いたそうです、富士市地域限定で
売り出したのですがすぐに完売したそうです。まだ読んでいません。

宇野先生は富士に二度来て下さって先生の指揮で第九を埼玉の方で
歌ったことがあります、とてもユーモアーのある方で
先生の言っているところが一番共鳴出来たような気がしました、
福島先生と


by jun (2009-11-24 21:21) 

hitoshi

こんばんは!
今日の青森は晴,12度くらい。11月下旬とは思えない気持ちの良い日でした。

この本は,出発直前に新聞で知って是非読みたいと思っていたものでした。
開いてびっくり!junさんからのコメントで知った福島先生が共同執筆でした。面白い。三者三様で良いと思いました。
宇野先生は,もう40年も前から,レコード評論で有名だった方ですから知っておりました。声楽家で指揮もしているということを,初めて知りました。

福島先生は若い方だったのですね。トスカニーニを絶賛されているのですが,トスカニーニ流の指導だと大変だったのでは(笑)?

東京では,アンちゃんの妙に都会風な言葉に苦笑しながら,親が7500円のチノパンツを履いているのに彼は15000円の細いジーンズ,万事その調子で食事をケチってファッションにつぎ込んでいる様子です。

キャンパス祭では若者の圧倒的な力を感じました。
将来の社会の力になれればと願うばかりです。

帰りの新幹線では,読書をしながら,スパークリングワイン小瓶とチーズで
青森まできました。

都会の喧騒よりは,田舎のほうがあっていますね。


by hitoshi (2009-11-24 22:07) 

jun

書いている途中でフリーズしました、
先の文章の続き
福島先生の音楽観とhitoshiさんの音楽観は似ていると
ずっと思っていました、
読んでみてどうでしたかかなり共通しているところがあったでしょう?

宇野先生は練習中も言葉は悪いのですが許せるところがあります、
歌ったあとに団員宛に巻き手紙のお礼状がきて団員全員がビックリ!
宇野功芳ファンは多いようです。


それではまた!
by jun (2009-11-24 22:16) 

hitoshi

福島先生は切れ味鋭い文章です。おそらく,そのような指導をされたのではないでしょうか?
私は,先生の切れ味,ある意味奥の奥までとことん追求するその姿勢に共感します。また,すごいオーディオマニアらしいですね。

お姉さんの心遣い,お友達への優しい気配り,暖かいものがこちらにも伝わってきます。

また!
by hitoshi (2009-11-24 22:33) 

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